マリルィーやりこみゲームブログ

ブロマガが死んだので今後ここに適当に書くかも

人生振り返り日記② 第二外国語

突然ですが皆さん、日本の大学は大抵「第二外国語」というものを必修で受けさせられることをご存知でしょうか? この「第二外国語」、英語どころか母国語すらまともに扱えない日本人に第3の言語を1年でそれなりのレベルまで習得させようという無茶を強いてくる現代の拷問であり、ある意味で大学で最も重要な科目と言えましょう。

私も例外ではなく、この第二外国語にひたすらに苦しめられてきました。今回はそのお話。

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大学に受かり嬉々として入学手続き、しかし入学前に決めなければならないことが一つ。それが第二外国語をどの言語にするかです。これは僕みたいな語弱にとっては留年を左右する死活問題です。この選択に大学4年間の生活が懸かっていると言っても過言ではないため、ここは両親と相談して真剣に決めました。

まず何故僕は英語が苦手だったのか?という疑問の切り分けから始まります。英語が苦手な人は共感できると思うのですが、英単語が覚えられないっていうところに尽きると思います。数十や数百ならともかく、数千種類もの文字列を一つ一つ日本語訳や発音という情報を込みで紐づけていかなければならず、ハードルが高いどころの騒ぎではありません。
しかも英単語を覚えて終わりではなく、覚えてようやくスタートラインというのがハードルの高さに拍車をかけています。当たり前ですがそれを長文読解などに応用していく必要があります。つまり数学で公式だけ覚えても問題が解けるようにならないのと同じで、英語も単語だけ覚えても問題が解けるようにならないということです。

更に気が遠くなることには英語にはリスニングというものがあります。他の科目は全ての問題が視覚によって問題を読み取るところ、なんと英語は聴覚によって問題を読み取ることがあるということです。突然ですが皆さんはRPGというゲームジャンルは得意でしょうか? 得意だという人はぜひマリオ&ルイージRPGというゲームをやってみてください。おすすめは4かペーパーマリオMIXです。やってみるとわかりますが、RPGのくせにやたらアクション要素が求められて大変です。そう、RPGの腕に加えてアクションゲームの腕まで求められるので難しいのです。英語のリスニングもそれと同じで、視覚に加えて聴覚まで求められるから難しいのです。そういえばマリルRPG走者の@ref0417さんが「マリルイ3RTAは英語みたいなもんだよ」って言ってたけどもしかしたらこういうことを言っていたのかもしれません。

……というわけで、英語っていうのはどう考えても参入障壁が高いのですが、それはそれとして第二外国語は必修なので何かを選ばねばなりませんし頑張って単位を取らねばなりません。幸いにして、英語と違って第二外国語はみんなゼロからのスタートなはずなので何とか食らいつける気がします。
ここで私が注目したのは中国語。先ほど英単語は文字列を暗記する労力が尋常じゃなく、スタートラインに立つまでが気が遠くなりすぎると言いましたが、それに対し中国語は表意文字ですから、これなら1個1個の単語を覚えるのにかかる労力が減少されることが期待でき、なんとか食らいつけるのではないでしょうか? そう期待した私は進級できる願いを込めて中国語選択をしたのでした。


最初の授業が始まり、テキストが渡されます。簡体字で書かれた文章の下にアルファベットが並んでいます。これは拼音と言ってその漢字をどう発音するかを表したもの。要は英語でいう発音記号みたいなもんです。
しかしここで衝撃の事実が言い渡されます! なんと! この拼音とかいうやつは覚える必要があるらしいのです!
あなたは英語で発音記号を覚えたことはありますか? 私はありません。というか大学入試において発音・アクセントという分野はセンター試験の10点分でしか登場せず、しかも東大は二次試験でセンターが圧縮される都合上1.2点分くらいにしかならないため無視するのが基本です。しかし今回はこれを覚える必要があるとのこと。
なるほど、私はどうやら第二外国語というものを甘く見ていたようです。よくよく考えてみればこれは当たり前で、中学生で初めてやり始める学問と大学生で初めてやり始める学問とでは後者のほうが難しいに決まっています。
しかし圧倒的苦境に立たされたことに変わりはない。英語よりも覚える分量が多いので最初から飛ばしていかないとついていけない気がします。

……

最初の単語テストはなんとか7/10点くらいは取れたような気がしています。もう9年も前のことなのではっきりとは覚えていませんが。しかしどんどんついていけなくなり、ついに期末試験の時期がやってきてしまいました。

さて、テスト勉強をしなきゃいけないのですが一体何から手を付ければいいのか……。中国語を履修していない方に向けて説明しますと、拼音ってやつは英語の発音記号みたいなのと同様、アルファベットの羅列だけではなく声調というイントネーションを表す記号みたいなのが上についてます。ちなみに僕は英弱すぎるので今イントネーションという言葉の意味が本当に「声の上がり下がり」で合っているのかどうかが不安だったためGoogleで調べました。

テスト勉強は難航を極めました。本当に覚える量が多い。カイジで「バスケットボールのゴールは程よい高さにあるからみんな入れようとする。あれが30m上空にあったら誰もボールを投げようとしない」という喩えがありましたが、まさにそんな心境です。覚えることの分量が理不尽なまでに多すぎてなんでみんなこれをやる気になるのかが全く理解できませんでした。
ただ当時は理解できなかったのですが、現在正社員として3年働いてようやく少しは理解できたような気がします。おそらく皆さんは語学を学習するときに1日3時間くらいは継続してやっていると思うのですが、僕は30分~1時間で音を上げてしまいます。しかし社会に出たらそうも言っていられず、1日8時間くらいつまらないことを延々とやる義務が発生します。もしかしたら大人たちがみな「英語は継続して1日n時間やろう!」っていうのは社会に出た後に正社員としてやっていくためのストレス耐性をつける一環という側面もあったのかもしれない。そう考えると1日3時間っていうのは確かにそこまで高いハードルではないように思えます。僕は視野が狭かったのだということを痛感しました。

……

さて、東大は50点以上で単位が来ます。第二外国語は1年を通して4コマあるのですが、実はいくつか単位を落としても平均で50点以上に届いていれば、単位をすべて取ったことにしてしまうという救済措置があります。ただし平均が40点を割ると2年生に進むことが出来ず留年となります。
そして40以上50未満なら進級はできますが、2年生の時に1年生に交じってもう一度講義を受けることになります。これは大変なことですよ。学年が違うと学籍番号が違いますし、毎回はじめの点呼の時に必ず最後に名前を呼ばれるのでみんなに単位を落として再履修をしていることが一瞬でバレます。小学生の頃チャレンジ1年生の3月号に「キミはかっこいい2年生になれるかな???」って書いてあった気がしますが、1年生の授業を受けてる2年生なんてカッコ悪いに決まっています。7歳の時に提示された目標が19歳になっても達成できない、なんて恥ずかしい人間なのでしょうか。
恥ずかしい人間になりたくないので頑張ったのですが、結果は40,40。おそらく留年させないために40点以下の評点はたぶんつけないことになっているのかもしれませんが、冬学期は夏学期より難しいので60点を取って平均50にすることは叶わないでしょう。大学入学半年にして留年するか、カッコ悪い2年生になるかの2択の未来になってしまいました。

そもそも留年しそうなので背に腹は代えられません。あまりこういうことはしたくなかったのですが、冬学期はヤマを張ることにしました。数学で「ベクトルとか確率が苦手だから微積とか整数問題が取れるようにする」みたいなことを考えた人がいるかもしれません。それと同じで覚える分量が多すぎるので分野に絞って覚えるという試みを行いました。結果、片方は結構刺さったのですがもう片方が大外れで、教員に土下座でもしようかと思いましたがかえって心証を悪くしそうなのでやめました。
最終成績は40,51で夏学期とあわせて平均42.75。さすがに平均50は成らなかったものの無事進級でき、しかもなんと初の単位取得に成功します。19年生きてきて僕が語学で成功体験を得たのはこれが初めてのことかもしれません。やればできるもんなんですね。

……

2年夏学期。先述した通り、1年生に交じって再履修するのですが、やっぱり恥ずかしいです。カイジの地下強制労働編にて「なぜ金を返さなかっただけでこんな目に合わなければいけないのか。しかし連中によるとそれが世の中で最も重い罪らしい」という言葉がありましたが、僕の気持ちはそれと同じで、「なぜ語学の出来が悪いだけで毎週こんな羞恥プレイを受けなければいけないのか。しかしどうも学問の世界ではそれが最も重い罪らしい」という心情でした。あまりに恥ずかしくて何回か心理的に行けなくなって休んじゃったので単位は取れないだろう…と半分諦めていました。ちなみに東大には2年夏学期でもなお平均点が50点に満たない劣悪語弱者には「特修クラス」という掃き溜めが用意され、そこで単位が取れさえすればもうそれでOKという最後の救済措置があります。もうそれがあるしいいかなって……。

……

2年冬学期。特修クラスに入れられてここで勝ちさえすれば全て解決するという状況です。気分はエスポワールに乗せられた多重債務者です。第1回で今まで使っていたものとは違う専用のテキストが渡されて、ここで教員から衝撃的な一言。
なんと期末試験はすべてこのテキストに書かれた文章からそのまま出題するというのです。ということは? 中学校とかでよく後々手詰まりする人がやりがちな勉強法である、期末試験は授業中にやった文章からしか出ないからその文章をそのまま丸暗記して穴埋めとかを何も考えずに正答して点数だけ盛るというよくあるアレが有効ということです。中学の時それをやって英語で90点台を連発していたのに高校に入ったとたん20点台とかになる友達がいました。僕は中学の時それすらできなかった (やろうとはしてたけど暗記力が不足していた) ので最初から40点台とかで後々20点台だったんですが、当時の僕は「中学の時あんなに点数良かったのに同じフィールドに落ちてくるんだな……」と高校英語の恐ろしさに戦慄していたことを思い出します。

というわけですべては進級のために、1日3時間くらい時間を取って必死にテキストを覚えることに費やしました。勉強の仕方が間違ってるような気しかしませんが正直暗記と理解のバランスってのを全く掴んだことが無く、語学の勉強法ってのが皆目わからないのでゴリ押すくらいしか思いつきませんでした。この頃は本当につらく、しかしもう留年まで後が無い状態なので前に進むしかなく、自分はなんでこんなことをやっているんだ? と考えたことが何度もありました。何書いてるのかわからなくなってきたな。

そして運命の期末試験は勉強の成果か、だいたい7割ほど埋めることが出来て (結局全部覚えるのは間に合わなかった。分量多すぎ) 、得点率5割くらいには達してるだろうという感じでした。そして成績発表の時に「合格」の2文字を見たときは本当に胸を撫で下ろしました。正直、大学合格発表の時より安堵感が強かったです。
しかし不思議と嬉しい気持ちはありませんでした。どちらかというと、もうやらなくていいんだ、やった。という解放感のほうが圧倒的に強かったように思えます。ちなみに「つまらないことでも成功体験を得て出来るようになってきたら楽しくなってくる」ということを言っている人がたまにいますが、絶対に嘘だと思います。つまらないものはつまらないです。

しかし僕のような語弱でもちゃんと留年せずに第二外国語の単位を取れたことは意外でした。なんだかんだで東大は (ちゃんと通学していれば) 留年しないようにできているんですね。しかしもしドイツ語やフランス語とかを選んでいたら進級できていたかどうかはわかりません。というかたぶん留年している可能性のほうが高かったんじゃないかなって今でも思います。

なお、東大には進振り制度というのがあって、各科目の平均点が高い者から好きな学部学科に行ける (厳密にはちょっと違うけどまあいいや) 仕様なんですが、語学で圧倒的なディスアドバンテージを食らうので、やりたいことがある語弱には東大はオススメできません。


以上。